Magnefy™ 磁性粒子のキャラクタライゼーション及びQC試験による評価
多くの種類の磁性粒子が、バイオアッセイや分離の固相として使用されています。超常磁性特性も同様に、自動化および高スループットのワークフローに適しているので、特定の物理的および光学的特性により、特定のアッセイシステム、フォーマット、およびプラットフォーム用の高度に調整された試薬の開発が可能になります。粒子の製造では、ルーチンの合成目的(定義された仕様、再現性、安定性)を達成し、特定のアプリケーションでの使用をサポートするために、包括的な特性評価およびQC計画の設計を必要とします。
新しい磁性マイクロ粒子Magnefy
Bangs社では、アッセイ開発用に幅広いアプリケーションを備え、核酸単離に焦点を当てて使用できる製品の製造販売を開始しました。製品ラインの特性と生産バッチのルーチンQCは、製品ラインの基本特性、各製造バッチ/ロットの定義された仕様、及びアプリケーション特有の性能要件を網羅する必要がありました。
製品の概要
Magnefy™は、酸化鉄層を持った独自のポリマーコアとカルボキシ基で修飾されたカプセルから成る1µmの超常磁性マイクロスフェアです。
製品シリーズの基本的な特性には、一般的な形態/表面トポグラフィ、粒度分布、カルボキシ基滴定値、鉄含有量、および磁気分離速度などがあります。
SEM画像
1um粒子の個別物理特性として、標準的な光学顕微鏡による観測では解像度が不足する場合には、グロス モルフォロジー(gross morphology)、表面粗さ、及び粒度分布に関する一般的な情報を提供するためにSEM画像の撮影を行ないました。SEM画像の撮影には、FEI Quanta FEG 250 @ 8kv、二次電子検出器を使用しました。(図1)。
粒度分布解析
粒度分布測定は、ローエンドのノイズを回避しながら全体の粒度分布を捉えるためにBI-DCP(Brookhaven社ディスク遠心式粒度分布測定装置)で行われました。粒度分布は、平均粒子径1um以下のガウス分布として得られました。
粒子表面のカルボキシ基滴定結果
Magnefy COOH 粒子は、NaCl希釈液中に懸濁した粒子を、窒素下でNaOHによる導電率滴定 (855 SR Ti アナライザー、メトローム社製) を行いました。滴定の前に、IX樹脂を用いて粒子試料を洗浄し、粒子表面から緩やかに会合或いは残留した荷電種を除去しましました。粒子表面には、〜500μeq/ gの高レベルのカルボキシ基で修飾されているという結果が得られました。
酸化鉄の含有
鉄元素の測定は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いて独立した研究室で行われました。 鉄(Fe)の含有量は、約40%の酸化鉄(Fe 3 O 4)に相当することが判明しました。
磁気分離率
磁気分離率は、経時的な吸光度の測定(Gensys 10S UV-Vis Spectrophotometer, ʎ = 400nm)により決定されました。Magnefyは、迅速かつ均一に分離しました。
製品の特性評価 アプリケーション固有試験
従来のイムノアッセイ開発に加えて、Bangs社では、アッセイ開発および核酸単離を含む分子アプリケーションのMagnefyの大きな需要があることを予測しました。タンパク質や細胞の温和な条件下(中性付近のpH、周囲温度、水緩衝液)で行われるイムノアッセイとは異なり、分子アプリケーションはしばしば厳しく極端な条件を特徴とします。
Magnefy粒子は、[Fe]溶出、磁性分離、および粒度分布に関してこのような条件の範囲でモニタリングされ、安定性を評価し、限界を定め適合性の指標となります。試験された条件には、極限pH、高塩濃度、カオトロピック露出、温度サイクル、および精密洗浄が含まれました。
pHレンジ(pH1~pH14、15日間)
粒度分布測定(コールターM3)で証明されたように、Magnefyは、pH1~pH13の範囲で分散性を維持できます。pH14では、二量体や三量体の粒子が形成されます。二量体や三量体の粒子は、磁性分離を加速します。
分散液 | pH | 日数 | 上澄液への鉄の遊離[Fe] (μg/mL) | 上澄液の色 |
---|---|---|---|---|
0.1 M HCl | 1 | 15 | 139.4 | 透明 |
0.01 M HCl | 2 | 15 | 7.65 | 透明 |
0.001 M HCl | 3 | 15 | 3.25 | 透明 |
0.0001 M HCl | 4 | 15 | -0.03 | 透明 |
10 mM MES buffer | 5 | 15 | -0.07 | 透明 |
10 mM MES buffer | 6 | 15 | -0.09 | 透明 |
10 mM MES buffer | 7 | 15 | -0.09 | 透明 |
10 mM Tris buffer | 8 | 15 | -0.04 | 透明 |
10 mM Tris buffer | 9 | 15 | -0.07 | 透明 |
0.0001 M NaOH | 10 | 15 | -0.09 | 透明 |
0.001 M NaOH | 11 | 15 | -0.09 | 透明 |
0.01 M NaOH | 12 | 15 | -0.09 | 透明 |
0.1 M NaOH | 13 | 15 | -0.16 | 透明 |
1 M NaOH | 14 | 15 | 0 | 透明 |
粒子の完全性試験は、pH4〜pH14(15日間)の溶液中で行われ、完全に維持されていることが確認できました。[Fe]の溶出(abs±562nm)及び磁気応答性の損失(図7a)のグラフで示されるように、酸化鉄の酸による腐食により致命的な分解が、強酸(0.1M HCl pH1,15日)の長期間暴露で観察されました。pH2とpH3での長時間の曝露では、僅かに[Fe]の溶出が生じましたが、これによる磁性分離特性に有意差のある影響は生じませんでした。
高い塩濃度 (1M – 5M NaCl, 15 日)
Magnefyは、1M、2Mおよび5MのNaCl溶液中に15日間懸濁させた場合、[Fe]の溶出は無く、単分散を維持しました。粒度分布と磁性分離特性は予想通りの結果が得られました。
カオトロープ(1M〜6Mチオシアン酸グアニジン)
Magnefy (1mg / mL)は、pH6.4とpH8で10mMトリスバッファー中に1M~6Mのチオシアン酸グアニジンで試験を行いました。粒子は、1時間、4時間、7時間及び24時間の間隔で鉄の遊離の試験が行われました。分散性と磁気応答性は、24時間後に試験が行われ、粒度分布および磁性分離は、カオトロープ暴露に影響されず、期待される特性が得られました。
耐温度サイクル (95°C 5分 / RT 5 分 x 50回)
Magnefy (1mg/mL 粒子, 10mM トリスpH 9)は、(95°C 5分 / RT 5 分)で50回行われました。 粒度分布と磁性分離は温度サイクリングの影響を受けず、期待された特性が得られました。
精密洗浄(10回)
Magnefy(1mg/mL)は、脱イオン水と磁性分離で10回洗浄が行われました。粒子は、ピペットによる分注でのみ再分散を行いました。粒度分布および磁性分離プロファイルは、分散体に忠実な特性を示し(粒子の凝集や粘着性無し)、上澄み液中に[Fe]は観察されませんでした。
アプリケーション固有試験 DNA分離
Magnefyの重要なアプリケーションには核酸の分離が含まれ、最も注目すべきは最新の核酸精製技術SPRI(solid phase reversible immobilization)です。 SPRIは、高塩濃度とPEGの存在下でカルボン酸修飾担体へのDNAまたはRNAの結合を特徴とします。 哺乳動物の血液(ヤギ)からのゲノムDNAのSPRIに基づく分離は、モデルとなる系として使用されました。Magnefyは、PCR-準備DNAの調製のために2.5M NaCl / PEG8000の条件下で、溶解した全血からgDNAを結合しました。
討論
Magnefyは、SEMイメージング、サイジング、表面滴定、鉄含有量測定、および磁気分離速度を含む広範囲にわたる製品特性評価を行い、アッセイ開発に十分な適合性が実証されました。 分子アプリケーション、とりわけ核酸単離での使用をサポートするために、アプリケーションベースのストレステスト(pH極限、高塩、カオトロープ曝露、温度サイクリング、精密洗浄)および機能試験(SPRIベースのgDNA単離)が行われました。
初期の製品特性評価は、正式な製造およびQC仕様の確立のための枠組みを提供します。 MagnefyのルーチンQCで特徴付けられる分析には、サイジング、表面滴定、磁気分離速度、およびgDNA分離が含まれます。
結論
粒子の製造で、製品特性評価製品の特性評価およびQCプログラムは、一般的な使用のための基本的な特性、定義された製造およびQC仕様、およびアプリケーション特有の要件に言及し、包括的でなければなりません。Magnefyの場合、初期特性、ルーチンQCによる裏付けデータ、基本特性および品質(例えば、リガンドコーティングのための高い表面力価、自動分析装置に適した粒径および磁性分離特性など)を使用することができます。特別なストレス試験と機能試験(gDNA単離)は、分子アプリケーションでの使用をサポートし、特にSPRIベースのDNA分離をサポートします。 メーカーの粒子特性およびQCは、あらゆる用途またはアッセイにおいて最適な性能を保証することはできませんが、粒子スクリーニングの有望な候補の同定を助け、微粒子試薬開発努力の基礎を提供します。